
夜、好きなことに集中していると、気づけば日付が変わっている。「そろそろ寝よう」と思って布団に入っても、頭だけはまだ動いていて、なかなか眠れない。
そんな経験、ゲームや読書、創作が好きな人なら一度はあるのではないでしょうか。
夜更かしの習慣があると脳が楽しさや没入感で活性化したまま、眠りのスイッチが入りにくくなってしまいます。そしてこのタイプの「眠れなさ」には、単純に早く寝ようとするより、脳と体内時計の両方に働きかけるアプローチが必要になります。
グリシンは深部体温を下げて眠りへの入口を整えてくれますが、体内時計がズレたままでは、入口の前に立っても扉がなかなか開きません。
テアニンで興奮した頭を静め、トリプトファンで体内時計を整える——この3つの組み合わせが、ブレインライフ系の夜には特に有効です。
趣味を楽しんだ夜ほど、眠れなくなる理由
「今日は疲れているから早く寝られるはず」と思っていたのに、ゲームや読書を始めたら止まらなくなって、結局また遅くなった。そういうパターンに心当たりがある人は多いと思います。
これは意志が弱いのではなく、脳の仕組みとして自然に起きていることです。
「楽しさ」は脳を覚醒させる
ゲームや読書、創作活動は、脳に強い刺激を与えます。特にゲームはドーパミン(快楽・報酬ホルモン)の分泌を促し、「もう一回」「次のステージまで」という感覚を生み出します。読書や創作も、集中している間は前頭葉をフル稼働させている状態。楽しければ楽しいほど、脳は覚醒し続けます。
問題は、趣味を終えた後もこの覚醒状態がしばらく続くこと。体は横になっていても、頭の中ではまだストーリーの続きを考えていたり、ゲームのプレイを振り返っていたりする——そういう経験はないでしょうか。

「楽しいことをしたのに眠れない」は、ある意味で脳が正常に機能しているサインでもあります。
問題はその覚醒を「眠りの準備」に切り替えるスイッチが弱いこと。仕組みを変えるアプローチが、このタイプには一番効きます。
グリシンだけでは「体内時計のズレ」には届かない
グリシンは就寝前3gの摂取で深部体温を下げ、眠りへの移行をスムーズにしてくれます。ブレインライフ系の人にも有効な成分ですが、一つ見落とされがちな問題があります。
それが「体内時計のズレ」です。
夜遅くまで活動する習慣が続くと、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌タイミングが後ろにずれていきます。本来は夜9〜10時頃から分泌が始まるはずのメラトニンが、習慣的な夜型生活によって深夜0時や1時まで出てこなくなる——これを「概日リズムの後退」といいます。
この状態では、グリシンで体温を下げようとしても、そもそも体が「まだ寝る時間ではない」と判断しているため、入眠が難しいまま。グリシンの効果を活かすには、体内時計そのものを整えるアプローチが必要になります。ここでトリプトファンが重要な役割を果たします。
テアニンの役割:興奮した頭を静かに落ち着かせる
テアニンはオフィスワーカー編でも登場しましたが、ブレインライフ系の人にとっては少し異なる文脈で働きます。オフィスワーカーの場合は「ストレスによる交感神経の興奮」が問題でしたが、ブレインライフ系では「楽しさ・没入感による脳の活性化」が問題の核心です。
どちらもテアニンのα波誘導効果が有効ですが、ブレインライフ系では「脳が喜んでいる状態から、静かな状態へ移行させる」という役割になります。
ゲーム・創作後の脳はなぜ覚醒しているのか
ゲームや創作中の脳は、β波(集中・興奮時の脳波)が優位な状態が続いています。この状態が長く続くほど、趣味をやめた後もβ波が残りやすく、横になってもなかなかα波(リラックス時の脳波)に切り替わりません。
テアニンを摂取すると、このβ波からα波への切り替えを後押しする効果が期待できます。強制的に眠気を引き起こすのではなく、「脳が自然に落ち着いていく」という方向に働くのがポイント。翌日の趣味に影響しない形で眠りに入れるというわけです。
📖 研究データ Rao TP, et al. (2015) のレビュー研究では、200mgのL-テアニン摂取により脳のα波が有意に増加し、不安や興奮を抑えながら脳を「休息の準備」ができた状態へと導く作用が確認されています。睡眠薬のような強制的な眠気ではなく、リラックス状態を引き出すという独自の作用が特徴です。
テアニンの量・タイミング・選び方
量の目安:100〜200mg
没入感が強い趣味をしている人は、200mgから試してみるのがおすすめです。
タイミング:趣味を終える30〜60分前、または就寝30〜60分前
ここがブレインライフ系ならではのポイント。趣味をやめてから飲むより、「そろそろ終わりにしようかな」と思うタイミングで先に飲んでおくと、自然に脳が落ち着いてきて切り上げやすくなります。
選び方:「L-テアニン」表記のものを
テアニンはL体とD体がありますが、研究で使われているのはL体です。含有量が明記されているものを選びましょう。

趣味を終えてから飲むより、終わる少し前に飲むほうが個人的にはおすすめです。
飲んでから30〜40分後に「なんとなく落ち着いてきた」という感覚が出てくるので、そのタイミングで自然に切り上げられるようになります。
トリプトファンの役割:体内時計をリセットする
トリプトファンは必須アミノ酸のひとつで、体内でセロトニンに変換され、さらにメラトニンへと合成されます。夜型の人の体内時計を整えるうえで、最も直接的に働きかけられる成分です。
セロトニン→メラトニンの合成経路
トリプトファンが体内時計に働きかける流れはシンプルです。
- トリプトファン → セロトニン(日中に合成・蓄積)
- セロトニン → メラトニン(夜に変換・分泌)
つまり、日中にセロトニンをしっかり蓄えておくことが、夜のメラトニン分泌量を左右します。夜型の人はこのセロトニンの蓄えが少なくなりがちで、結果としてメラトニンが出にくい状態になっていることが多い。
夜型の人に特有の「メラトニン後退」
習慣的な夜型生活が続くと、メラトニンの分泌ピークが後ろにずれていきます。本来深夜0〜2時頃が分泌のピークですが、極端な夜型では明け方近くまでずれることもあります。これが「早く寝ようとしても眠れない」の正体のひとつです。
トリプトファンを継続的に摂取することで、メラトニン合成の材料を補い、体内時計を少しずつ前に戻していく効果が期待できます。一晩で劇的に変わるものではありませんが、2〜3週間続けることで「以前より早い時間に眠くなってきた」という変化を感じる人も多いはずです。
📖 研究データ Sutanto CN, et al. (2022) のメタ分析(18本の研究を対象)では、トリプトファンの補充が夜中に目が覚める時間(WASO)を有意に短縮させ、睡眠効率や入眠潜時の改善にも寄与することが示されています。Nutrition Reviews, 80(2):306–316.
吸収効率を上げる「食事との組み合わせ」
トリプトファンは単体で摂っても、脳への輸送効率がそれほど高くありません。他のアミノ酸と競合して血液脳関門を通過しにくくなるためです。
吸収効率を上げるには、炭水化物と一緒に摂るのが有効。炭水化物を食べるとインスリンが分泌され、競合する他のアミノ酸が筋肉に取り込まれることで、相対的にトリプトファンが脳へ届きやすくなります。夕食後に摂取するか、バナナや少量のおにぎりと一緒に飲むのがひとつの目安です。
トリプトファンの量・タイミング・注意点
量の目安:250〜500mg
まずは250mgから始めて、様子を見ながら調整していきましょう。
タイミング:夕食後、または就寝1〜2時間前
炭水化物との相乗効果を狙うなら夕食後がベスト。就寝直前より少し早めに飲んでおくほうが、メラトニンへの変換が間に合いやすいです。
注意点
抗うつ薬(SSRI・SNRI)を服用している場合は、トリプトファンとの相互作用が起きる可能性があります。該当する人は必ず医師に相談してから使用してください。

トリプトファンは「今夜すぐ眠れる」成分というより、「体内時計を少しずつ前にずらす」成分です。
2週間続けてみて「前より自然に眠くなる時間が早まった」という変化が出てきたら、うまく働いているサインだと思います。
3つを組み合わせる:実践ガイド
ブレインライフ系の人向けに、飲み方を整理します。他のタイプと少し違うのは「趣味の終わり方」と連動させるとより効果的という点です。
基本の飲み方
| 成分 | 量の目安 | タイミング |
|---|---|---|
| グリシン | 3g | 就寝30〜60分前 |
| テアニン(L-テアニン) | 100〜200mg | 趣味を終える30〜60分前 |
| トリプトファン | 250〜500mg | 夕食後、または就寝1〜2時間前 |
トリプトファンは夕食後に、テアニンは趣味の終わり頃に、グリシンは布団に入る直前——この流れが、ブレインライフ系には合いやすいパターンです。
趣味をやめる時間の目安
「趣味をやめないといけない」というわけではありません。ただ、画面から出るブルーライトはメラトニン分泌を抑制するため、就寝1時間前を目安に画面から離れると、サプリの効果が出やすくなります。
「やめる」より「切り替える」という発想でゲームや動画の後に、紙の本や音楽など画面を使わない趣味にシフトするだけでも変わってくるかもしれません。

「スマホをやめろ」という話はよく聞くと思いますが、いきなりやめるのは難しいですよね。
「1時間前から画面を暗くする」「ナイトモードにする」だけでも、ゼロよりはずっといい。完璧を目指すより、できる範囲で少しずつ整えていくほうが長続きします。
よくある疑問
Q. トリプトファンはバナナや牛乳で代替できますか?
バナナや牛乳にもトリプトファンは含まれていますが、含有量はサプリに比べてかなり少ない。バナナ1本に含まれるトリプトファンは約10mg程度で、250mgを食事で補うには現実的ではありません。食事で意識することは大切ですが、体内時計を整えることを目的とするならサプリで摂るほうが確実です。
Q. 毎日飲まないと体内時計は戻りませんか?
体内時計のリセットは継続性が重要です。飲んだり飲まなかったりでは効果が出にくいため、最低2〜3週間は毎日続けることをおすすめします。休日に夜更かしをするとリズムが崩れやすいので、休日も同じ時間に飲む習慣をつけるとより効果的です。
Q. テアニンとトリプトファンを一緒に飲んでいいですか?
問題ありません。テアニンは脳のα波を引き出し、トリプトファンはメラトニン合成を促すという異なる経路で働くため、相互に干渉することなく組み合わせられます。
まとめ
ゲームや読書、創作が好きな人の「眠れない夜」は、ストレスや疲労ではなく「脳の楽しさによる覚醒」と「体内時計のズレ」が原因であることが多い。この2つに同時にアプローチできるのが、テアニン+トリプトファンの組み合わせです。
- グリシンで深部体温を下げ、眠りへの入口を整える
- テアニンで楽しんだ後の脳の興奮をゆるやかに落ち着かせる
- トリプトファンでメラトニン合成を促し、体内時計を少しずつ前に戻す
趣味をやめる必要はありません。飲むタイミングと「切り上げ方」を少し工夫するだけで、夜の過ごし方が変わってくるはずです。
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参考文献
※ 学術論文のため英語表記のまま掲載しています。
- Bannai M, et al. (2012). “New therapeutic strategy for amino acid medicine: glycine improves the quality of sleep.” Sleep and Biological Rhythms.
- Kawai N, et al. (2015). “The Sleep-Promoting and Hypothermic Effects of Glycine are Mediated by NMDA Receptors in the Suprachiasmatic Nucleus.” Neuropsychopharmacology.
- Rao TP, et al. (2015). “In Search of a Safe Natural Sleep Aid.” Journal of the American College of Nutrition.
- Sutanto CN, Loh WW, Kim JE. (2022). “The impact of tryptophan supplementation on sleep quality: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression.” Nutrition Reviews, 80(2):306–316.


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